ソロモン群島進駐(二)

 師団主力はガダルカナルに進撃するはずであるが、船の都合でもあるのか、一旦この辺りの海岸に仮の宿営をしているようだった。すぐ隣接して衛生兵が宿営していたが、その中に同じ日に応召になった郷土の久保準治君がいて、よく海岸で一緒になったときなど、郷里の話をして楽しんだ。またブリスベン丸では、郷土の高橋君という人も同じ日に応召になっていた。

 我が隊の本部は先に来て、飛行場の近くにいることが分かり、渡辺兵長と二人で連絡にやらされた。定期的に各隊及び船舶間を通う大発に便乗していったが、本部でも低い天幕生活で兵隊も元気が無かった。この時、本部では赤痢患者が出ていた。それで、昼食を食べた際、その菌を貰ってしまったので、一週間ほど経ってから急に発病し、一人で隔離小屋に入れられ、半月以上も死ぬ思いをすることになった。この連絡の用件は何であったか忘れた。帰りに便船が無くなってしまい、仕方が無いので海岸伝いに歩いて帰隊することにしたが、途中かなり大きな河口に出た。橋は無し、もちろん船も無いのでやむなく身包みを脱いで頭の上に乗せ、やっと渡ったが、後であの河口には鰐が出没し、洗濯に出た兵隊が喰われたと聞いて、肌寒い思いをした。

 この島には花らしい花は殆ど見られず、ものすごいジャングルだったので小鳥もあまりいない。時々ギャーギャーというオウムに似た鳥を見かけるだけだった。また、ジャングルには大蛇がいると聞かされたが見たことは無かった。しかし、トカゲのたくさんいるのには驚いた。大は長さ二メートルくらいのものから、内地にいるようなものくらいの小さいのまで、実に様々なのがうようよしていた。

 上陸後三日経った頃、海岸沿いに走る大発の中から、

「防疫給水部。」

 と大声で呼ぶので連絡を出すと、司令部のある佐渡丸(輸送船)まで連絡将校を出せ、とのことだった。すわ、いよいよガ島進撃の命令だろうというので、隊長の山内大尉が出張したところ、軍直轄の防疫給水部の誤りということで、我が隊はここに残留と分かり一同何となくホッとした。

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